Anki: 誤文訂正問題
誤文訂正問題のカードを Anki の穴埋め問題を応用して作成したい。
次のようなカードAが望ましい。
次のようなカードBは望ましくない。
穴埋め問題の仕様には次のページが簡単で詳しい。
rs.luminousspice.com
誤文訂正は,提示されたパッセージから主に統語的な間違いを指摘する問題形式で,多くは多肢選択法をとる。たとえば次のようなものがある(早稲田大 (2021) 社会科学部・一般選抜・英語・大問1*1)。
A dead(a) triangle of factors is responsible for the killing off(b) of about forty percent(c) of all the honeybee colonies(d) in the US last year. NO ERROR(e)
作るだけならこれを模して,当初のBのようにすればいいのだが,いささか情報量が多く,効率の悪いカードとなってしまう。
学習の効率化,とりわけ情報の削減と視線の固定を重視したカードを作る。
穴埋め問題の仕様の項目で,穴埋め問題に関する種々の記法を簡単にまとめている。これらは本稿で用いるので,合わせて参照されたい。
解決
まず,正答の箇所を穴埋めにする。ヒント機能を用いると,カードの表で穴埋め箇所に文字を表示することができる。表で誤りを表示し,裏で訂正されるようにする。
Fewer students are choosing liberal arts as their majors in the 2000s than in the 1980s {{c1::probably because of::probably because}} the contemporary view that a college education is a means to enter the job market.
この文を誤文訂正問題として機能させるため,ダミーの選択肢を設ける*2。次の太字の箇所をダミーにしたい。
Fewer students are choosing liberal arts as their majors in the 2000s than in the 1980s {{c1::probably because of::probably because}} the contemporary view that a college education is a means to enter the job market.
多肢選択法の問題は,それぞれの選択肢に体裁の平等性を持たせられるとよい。穴埋めの箇所はスタイルシートで font-weight: bold; と color: blue; が適用されているので,それを模するのでもよいが,Anki の将来的な仕様変更などを考慮すると,穴埋め問題の機能を正答選択肢と同じように用いて表示させたい。
穴埋め問題に複数の空欄を設定し,しかも1枚のカードですべて表示したい場合,{{cN::____}} のNを同じ数字に揃える*3。さらに,ヒント機能をふたたび使うと,表と裏とで同じ表示になる穴埋めが作成できる。訂正されない選択肢はこれで表現できる。
{{c1::Fewer students::Fewer students}} are choosing liberal arts as their majors in the 2000s than {{c1::in the 1980s::in the 1980s}} {{c1::probably because of::probably because}} the contemporary view that a college education is {{c1::a means::a means}} to enter the job market.
以上で,誤文訂正問題は最低限表現できた。
正答肢では訂正を,他の選択肢では表と同じ文字列を,それぞれ裏面に表示し,表裏に変化を生じさせることで,誤文訂正問題の答え合わせをすることができる。問題の表示から答え合わせまで,所掲の文の範疇で完結させることで,視線や意識の揺れ動きは最小限に収まり,学習が高効率となる。選択肢を (a),(b),……などと識別し,文の外部に解答欄を設ける必要はない。
さて,このままだとどれも一様に font-weight: bold; color: blue; のままなので,裏面において,正答肢を区別して強調したほうがよい。ここでは文字色を変更する。そのためには,{{c1::__A__::__B__}} のうち,裏面で表示されるAの部分の体裁のみを変える*4。
{{c1::Fewer students::Fewer students}} are choosing liberal arts as their majors in the 2000s than {{c1::in the 1980s::in the 1980s}} {{c1::probably because of::probably because}} the contemporary view that a college education is {{c1::a means::a means}} to enter the job market.
ここで,HTML の font タグなどを使用して色を変更すると,夜間モードにした場合,背景色に合わせて文字色が変わらないため,次のような見づらい表示になる。
ナイトモードにも対応するため,スタイルシートを編集する。
穴埋めの箇所の体裁は,スタイルシートの cloze クラスで制御されている。夜間モードで表示する場合,穴埋めとして青色になる文字列は水色に表示されるのだが,ここには nightMode クラスが関与している。
.cloze { font-weight: bold; color: blue; } .nightMode .cloze { color: lightblue; }
夜間モードで独自の適用を行う場合,このクラスを使用する。たとえば,
... {{c1::<span class="red">probably because of</span>::probably because}} ...
.red { color : red; } .nightMode .red { color : orange; }
とすることで,次のようなある程度見やすいカードを作成できる。
穴埋め問題の仕様
穴埋め問題の空欄は次のように記述できる。
{{cN::__A__}}
{{cN::__A__::__B__}}
Aは解答,Bはヒントである。ヒントは空欄部の表に文字列として表示され,解答は裏面に表示される。
たとえば,次のカードは画像のように表示される。
Elle {{c1::achète::acheter}} des cahiers.
ヒントのないカードを生成することができる。
たとえば,次のカードは画像のように表示される。
{{c1::Tu}} es étudiante.
Nは問題番号である。問題番号を複数定めることで,1枚のノートから複数の穴埋め問題カードを生成することができる。
たとえば,次のノートからは,画像のような2枚のカードが生成される。
Он {{c1::е́дет::е́хать}} в {{c2::Герма́нию::Герма́ния}}.
1枚のカードで複数の空欄を使用したい場合,複数の空欄に同じ問題番号を定める。
たとえば,次のような模式から生成されるカードの6枚目は,以下の画像のようになる。
*1:https://www.waseda.jp/inst/admission/other/2021/01/25/9836/
*2:誤文訂正は,複数ある誤りの候補から正答を絞って訂正することが肝要であって,一箇所ばかりが強調されては学習効果が低減する。
*3:cN の仕様はこの記事の下部で詳述している。
*4:Bまで変えると編集がカードの表にまで及ぶ。